W杯男子・韓国戦 監督采配の差で完勝 [バレーボール]
植田監督、韓国戦の連勝記録を伸ばしましたね。「日本が韓国に負けない」というより、「韓国が日本に勝てない」レベル。韓国・ユ監督は必死に動いてきてたけど、すべてが後手後手だったよ、なーんて勝者の余裕を見せてみたり。
FIVBの基本データとして、日本と韓国は身長差はそれほどないけど(韓国がやや高いかな)、最高到達点では、スパイクもブロックも日本のほうが20~40センチ高い。身長・体重から考えても見た目でも、筋力も日本のほうが上。経験も上。なので、勝てなければおかしい。
それに加えて、日本は植田監督の綿密な作戦と、それを可能にする正確なプレー(特にサーブ)があって「完勝」したのだ。解説の川合はすっとぼけたことばっかり言ってたけど。録画してないので不正確かもしれませんが、「私はこう見た!」を書いてみます。
<第1セット>
ローテーションを図にすると、こんな感じ。上が韓国。
セッター(2) 8 シン(9・キャプテン)
12 18 ムン (4)
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荻野 清水 松本
山村 宇佐美 石島
これを実況の森アナは「スーパーエースにムン・ソンミン」と説明していた。けれど、ムンは後衛の時だけレセプションに参加していたので、日本的に言うなら変則的な「ライト」。男子の千葉、女子の木村と同じ役割でスタートしたのだ。女子(特にアジア)に多いフォーメーションなので、師匠のT.w.さんは「女子型」と名づけている。「守備型」、と言ってもいいかもしれない。対する日本は、宇佐美が後衛中央から始めるローテで、清水はレセプションに参加しないオポジット(スーパーエース)。男子の主流のフォーメーションなので「男子型」または「攻撃型」。
さて。全日本女子がアメリカにこてんぱんにやられたときの郎平監督の作戦を思い出して見て下さい。木村をサーブで徹底的に狙って攻撃枚数を減らし、ブロックをしぼって止めに行くパターン。これとまったく同じことを、今日の日本は第1セットで仕掛けた。
つまり、徹底的にムンをサーブで狙う。荻野が序盤でサービスエースを取り、そのあとも崩し続けた場面がリプレイされていたけど、まさに作戦通り。荻野がサーブのときは、ムンは後衛ライト。そこから攻撃を仕掛けたいのに、荻野のサーブで前後に揺さぶられてバックアタックに入れない。
そうなると、攻撃は前衛の2枚と打数の少ない12番のバックアタックしかない。しかも、前衛にいるシン(9)は守備的選手なので決定力がない。FIVBデータでは、身長200センチなのに最高到達点がスパイク300センチ、ブロック290センチしかないのだ。数字が間違ってないとすれば、男子ではちょっとありえない低さだ。
荻野のサーブで日本は「作戦的中!」を実感してノリまくり、若い韓国は焦ってばたばたし始めた。そこでユ監督が動く。ムンをレセプションから外したのだ。いわゆる「攻撃型」に変えたわけで、そうなるとサイド2人とリベロでサーブを取ることになる。ただ、リベロとシン(9)が守備範囲を広くとり、12番はほとんど参加していない。なので、日本は徹底的にシンを狙った。もともと、ムンが前衛のときはサーブはシンを狙えという指示が出てたんだと思う。ムンが外れたので的はシンだけになった、というわけ。
いくらレセプションがうまい選手でも、荻野、清水、宇佐美、石島のジャンプサーブに集中的に狙われるともたない。しかも今日は、4人ともほとんどミス無く正確にシンを揺さぶっていた。そんなわけで韓国のコンビを封じ込めて圧勝。
さらに韓国はコミットブロック(トスが上がる場所を予想してブロッカーが待っている)なので、松本にCクイック、山村にBクイックを打たせていたことが後できいてくる。
<第2セット>
守備型の弱点を狙われた韓国は、ムンをシンの位置にいれ、シンを12番の位置、そして12番を下げて1番を「ライト」ではなく「スーパーエース」としてオポジットに入れた。この辺も実況や解説は変なこと言ってたけど、1番はレセプションに参加してなかったはず。あくまでもサーブを取るのは、ムン、シン、リベロの3人だ。
このフォーメーションではなぜか、ムンが後衛センター、リベロが後衛ライトの位置でサーブを取っていた。一般的には、守備力があるリベロがセンターで取るのに。推測すると、第1セットに後衛ライトにいて狙われたこと、後衛センターからのパイプ攻撃(センターからの低くて速いバックアタック)を狙ったこと、があるのかもしれない。
ところが、ムンをセンターに置いたら余計に狙い易くなる。実際、日本は、石島・宇佐美がムン、清水・荻野がシンと狙いを分担して、徹底的にサーブで崩しにかかった。攻撃と守備の要のムン、キャプテンで守備の要のシン、この2人を潰されたら韓国はどうしようもできない。
さらに日本は、松本Cクイック、山村Bクイックを軸に、「左右の揺さぶり」を仕掛けた。清水・松本が並ぶとCクイックとライト攻撃なので、韓国はライト側にコミットせざるを得ない。そうするとレフトが1枚になってしまい、荻野のレフト平行が決まる。清水・山村のときは、Bクイックとライト攻撃なので、中央に穴が開いてしまう。そこを石島のパイプ攻撃で抜かれる。高さの無い韓国にすればお手上げ状態だったはず。実際、ブロックはずたずたでほとんど跳べていなかった。
そんなわけで、第2セットも圧勝した。
<第3セット>
ユ監督はそれでも諦めず、次の手を打ってきた(どこぞの女子の監督にも見習ってもらいたい)。スタメンをすべて第1セットと同じように戻した上で、ローテを1つずらし、セッターが前衛ライト、ムンが後衛レフトから始まるようにしたのだ。さらに、サーブを取る位置も、リベロが中心という一般的なスタイルに戻した。
最初のローテで、リベロが後衛センター、ムンが後衛レフト、シンが後衛ライトでサーブを取ることになるので、これは堅い。第2セットまでやられていた日本のジャンプサーブのうち、石島と宇佐美はこれでしのげる(実際に、終盤の植田監督の指示「自分のベストサーブでいけ」が出たとき、2人は狙いどころが無くて=ぎりぎりを狙いすぎて、サーブミスをしていた)。
第2セットまでは6回中4回のサーブで崩されてた韓国が持ち直し、第3セットが競り合いになったのは、たぶんこのスタメン・ローテ変更がはまったからだ。
ところが、今度はムン、シンの両方が前衛に来るローテが穴となった。ムンは前衛の時はサーブを取らないので、リベロ、シン、12番で取ることになる。第1セットでは、このローテは松本のへなちょこサーブだったから余裕だったはず。なのに、ローテを1つ動かしたせいで清水のサーブにあたってしまったのだ。
しかも、第2セットの反省からから、リベロが真ん中でかなり広く守備範囲を取っていた。そうなると、清水の渾身の力で打ってくるドライブかかりまくりのジャンプサーブをきちんと返すのは至難の業。
それでも中盤まではしのいでたけど、終盤、植田監督は清水の前のローテで、松本に代えて越川をピンチサーバーで起用し、さらにプレッシャーをかけた。越川が1本サーブで崩して期待に応えただけに、ついに韓国が折れる。続く清水の渾身のサーブでリベロが崩され、万事休す。日本に一気に走られて、力尽きたのでした。







な~るほど~~~!
わかりやすい解説、ありがとうございます。
「日本、一時期に比べてサーブよくなったなあ」とは思ってましたが、植田監督、だてに滝修行してないな(笑)。Y監督よ、今からでも遅くはない、滝へGO!
今日は戦術も選手起用も納得のいく試合を、久しぶりに見せてもらいました。スッキリしました!
なにより、「全敗」を免れたのがうれしい(>_<)!!(出た、ネガティブシンキング^^;)
by madoka (2007-11-19 22:57)
はじめまして。スポナビ+の「ちょっと一言言わせていただきます」の管理人、古都の侍です。
トラックバックやコメントありがとうございます。
そんなトラックバックから飛んできてよくこのサイトを拝見させていただいています。とっても解りやすくて、勉強になります。
さて、今日の韓国戦ですが女子にない理論だったサーブの狙いの指示、選手の使い方、Y監督に植田監督のつめの垢をせんじて飲ませたいです・・・
植田監督をはじめ、コーチやアナリストのデータをもとに立てられた戦略の上を選手がしっかりと動ける。しっかりと最善の戦いをしようという意志を女子以上に感じるのは私だけでしょうか??
明日以降も、強豪国との戦いが続きますが、一つでも多くの勝ち星、いいプレーを見せて欲しいと願っています。
追記、ゾルジ兄貴の記事もとても面白く読ませていただいています。
by 古都の侍 (2007-11-20 00:09)
>madokaさん、ついに「滝」派に転向ですか(笑)。今日の日本は隙がなかったですね。早めのタイムアウト、選手交代も、実況はびっくりしてましたが、植田監督には確信があったんでしょうね。
韓国は勝たなければいけないレベル差があったので、ほんと良かったです。次のオーストラリアはどう攻めるか。楽しみです。
>古都の侍さん、こちらこそ、いつもおじゃましてます。
柳本監督もアナリスト3人ぐらい雇って会場でデータ集めさせるべきですね。番平コーチのパソコンに届いているのかもしれませんが、試合にはぜんぜん反映されず。。。
男子は、データがあって、それをもとにした戦略があって、さらに、戦略を可能にする選手招集・育成、ときちんと筋が通っていると思います。正直、ここまでの2戦の内容は予想外に楽しめるものでした。植田監督が初日、「采配の差」と選手をかばったのは、こうした下地があったからなんですね。
もう一つ、記事中にも書きましたが、韓国の監督も諦めずにあの手この手を出してきたことが印象的。引き出しをきちんと持っていて、ただずるずると負けるようなことはしない。これも柳本監督に見習ってもらいたいです。
by rio (2007-11-20 00:26)
こんにちは。
この記事を読んで、韓国戦をリプレイしてしまいました。
お陰で2倍楽しめましたよ。ありがとうございます!
私の男子のイメージは『飛べ山本!』だったので、この展開に
興奮しまくっております。
確実に成長しているんですね。羨ましいです。
清水がデータ取られまくりだろうと思うと後が怖いですが
控えの選手も厚そうだし頑張ってもらいたいですね。
切符をここでとってもらいたいなぁ。
Y監督もサブちゃんを熱唱してる場合じゃないよ!
この勝利の戦術解説を女子でも読める日が来ることを願います!!
by メロ (2007-11-20 14:03)
>メロさん、こちらこそありがとうございます。
昨日はなぜかスポナビのトラックバックがいつまでたっても受け付けられない状態になっていて、今日になってやっとできたのでした。
小林敦・東レコーチによると、シンはいつもはオポジットに入っているそうです。ただ、そのフォーメーションだとサイドのレセプション能力が落ちすぎるのでサイドに入れたのでは、と。第1、3セットを、リベロ、シン、ムンと12番、という変則の3枚レシーブにしたのはそういう事情があったのですね。
ただ、韓国は世界最終予選にむけ、相当程度の戦力を温存しているそうです。侮れませんね。
女子の戦略の無さについては、ヨーコ・ゼッターランドさんが、スポナビに書いていた「総括」の中ではっきりと指摘されています。さすがのチーム柳本もゼッターランドさんのコラムは読むでしょうから、何らかの改善があると期待しましょう。
by rio (2007-11-20 15:42)
ゼッターランドさん、ズバ切りでしたねえ!
いちいち頷きながら読みました。
冷静そのもの、といった語り口ですが、冷静さの中にもふつふつとした怒りが感じられました。
というか、冷静だからこそ、「あ、マジで怒ってる…」という怖さが滲み出てて、すごくよかったです(笑)。
お昼の「ハイライト」で男子の韓国戦をふり返り、渡辺カズが思わず口を滑らせた「“男子の場合は”、誰が出ても、控えが出ても、戦力が落ちないっていうところが素晴らしい!」はナイスコメント!でした。もちろん本人は何も考えずにただ言っただけ、なんですけどね^^;
ちなみに川合は、「俺はいい解説してる」と自画自賛でございました…。
ゼッターランドさんは、男子については書いてくれないのでしょうか?
by madoka (2007-11-20 19:02)
>madokaさん、川合はセンターのことだけはきちんと話せるんですよね。でも、サイドアウト制しか経験していないし、たしか30歳にもならないうちに引退しているので、ラリーポイント制(特に戦術面)に関しては何にもわかってない気がします。ゾルジが指摘した「日本は戦術がずっと変わっていない」の象徴的存在ですね。
by rio (2007-11-21 14:31)